遠く、
どこかから響いてくる音。
初めて聞くようで、懐かしい。
いつ、
どこで聞いたのだろう?
「ねえ」
「髪、そろそろ切ったら?」
面倒なんだ。放っておいてくれよ。
「また、そんな事言って。社長さんに怒られるんじゃないの?」
関係ないだろう。
「まあ、そうだけど。いいけどね、別に」
人のことより、自分の事を心配したら?
「私?…大丈夫、だよ」
準備は、進んでるのか?
「うん…向こうのご両親にも挨拶したし、式場の下見にも行ったし…」
そう。
「お母さんがね、”彼の事をよろしくね”なんて。目をウルウルさせながら言うの。…ちょっと、こっちも泣きそうになっちゃったよ」
気に入ってもらえたんだな、良かったじゃないか。
「そうだね。うん。お父さんも、昔気質の感じで。真面目そうないい人だったよ」
うまくやっていけるといいな。
「大丈夫だよ、愛しあってる二人だし」
そんな事は聞いてないよ。第一、二人がそうだったとしても、周りの人ともうまくやれなきゃ仕方ないだろ。
「フフ、そうだね。でも大丈夫だってば。心配?」
なんで俺が心配するんだよ。
「別に、いいと思うよ。心配くらいしてくれたってさ」
まあ、頑張って幸せになんなよ。
「何それ(笑)?”頑張って幸せになる”って、なんかおかしくない?」
だってそうだろ。結婚がイコール幸せではないし、結婚したからって幸せになれる保証も無い。
「なによー、そんな悲観的なことばっか言わないでよ。そんなことだから未だに…」
なんだよ?
「…なんでもない」
別にいいけどさ。
「ねえ、誰かいい人見つからないの?」
余計なお世話です。今は忙しくて、それどころじゃないし。
「あー、もしかして…私のことが忘れられないとか?」
そのへんにしてくれないと、怒るよ。
「…ゴメン」
(だったらどうだって言うんだよ)
「え、なに?」
なんでもないよ。
「なんか…あっという間だった気がする。別れてから…」
そんなこと、
「ううん、わかってる。今さら思い出したって仕方ないことなんだし」
…そうだよ。
「でも、」
…なに?
「…んー、なんでもない」
なんだよ。言えよ。
「いいんだ、なんでもないの」
そう。ならいいけど。
「いいんだ?」
なにが?
「本当にいいの?」
だから、なにが…
「止めてくれないの、」
「って聞いてるの」
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あのー、
コレ、もうちょっと続けてもいいですか?
というわけで、次回に続きます。