~浅草、そしてお台場へ~最終章”じゃあノンフィクションって何のことだろう”

夜の潮風を受けながら、僕らはお台場の海辺へ続く歩道を歩いた。さっき僕のほうからつないだ手は,
「コーヒー買おうよ」と言って自動販売機に向かって歩き出した彼女に、さりげなく離されてしまった。

缶コーヒーを2本買い、海辺へと歩いていく。12月ということもあり、人の姿はまばらだ。が、何組かのカップルとすれ違う。自由の女神像の前で写真を撮っている人たちもいる。女の子が一人に、男が二人。雰囲気から察するに、女の子は男二人のうちの片方と恋人同士なのだろう。もう一人はその友達といったところか、おどけたポーズをとって他の二人を笑わせている。

「あの人たち、カップルとその友達かなんかかな?」

彼女がそんなことを言う。どうやら同じ事を考えていたらしい。

「カップルの方はいいだろうけどさ、それと一緒に来てる男一人ってどうなのかな?場所的に…惨めって言ったら言い過ぎかもしれないけど。自分だけ一人で、淋しくなったりしないのかな」

それはよくわかる。なぜなら彼女と出会うまで、僕もそうだった。仲のいい友達と、その恋人。元から仲が良かったから、よく三人で遊びに行っていた。

「俺もそんな時期があったけど、別に惨めになったりはしなかったよ。ああ、でも羨ましいとは思ったかな」

それは要するに、惨めになってたということか。そんな風に考えながら、彼女に言った。

「え、そうだったの?…そんなの初めて聞いた。いつごろ?」

「…まだ、お前と出会う前だよ。今から…5、6年前かな」

「じゃあ、わたしと会う二年くらい前だね。付き合い始めたのはそれから一年くらいたってからだから…」

そう、僕らは付き合って三年になる。いつものように男友達と一緒に行った渋谷のクラブで、初めて彼女を見た。生まれてからその日まで、僕は自分の事をずっと奥手だと思っていた。だけど彼女を見たとき、気づいたらもう話しかけていた。われながら驚いたけど、必死に話題を探し、ドリンクをおごって、帰り際に連絡先を聞き出すことに成功したんだ。

「あの時」

「?」

「俺がクラブで声をかけた時。かかってた曲。覚えてる?」

「おぼえてるよ」

と言って、彼女は笑った。一瞬、その笑顔は昔と変わっていないように見えた。

「ne-yoの”so sick”でしょ?いきなり近づいてきて、”俺、この曲すごい好きなんだ”とか言うんだもん。何だそれ、もう少し考えて話しかけろよ、って思った」

「あの時はさ、何も考えられなかったんだよ。”とにかく話しかけなきゃ”って、それだけで」

「純粋だった、ってことかな?」

「…そうかもね」

 

少し間をあけて、それから彼女は一息に次の言葉を言った。

 

「でもいまはちがう」

 

その顔はもう、笑っていなかった。

「…どういうこと?」

違う。わかっている。僕には、彼女の言う意味が。

「あの頃は、純粋にわたしを好きでいてくれた。わたしだけを」

「…」

「でも今は違う、そういうことだよ」「なんでわざわざ聞きかえすの?」「自分が一番わかってるんでしょ?!」

と、畳み掛けるように彼女は続けた。

気づくと、その目には涙が浮かんでいた。

僕は、何も言えずにいた。

「何で”お台場に行こう”なんて言い出したのか、わかってるよ。思い出の場所だもんね。始めた時と同じように、ここで終わりにしようと思ったんでしょ。そうするのがカッコいいとでも思ったの?!そうすればキレイに終われるとでも思ったの?!」

彼女は声を荒げた。頬にはもう、大粒の涙がつたっている。

「わかってたよ、もう最後なんだって。わかってた。だから覚悟して、絶対に泣かないって決心して、笑って別れてやろうって思ってたのに。なのに…」

すすり泣きながら、彼女は言った。

それでも僕は、何も言えず、ただ彼女を見つめたまま立ちつくす事しかできなかった。

気がつくとあたりに人気は途絶え、ただ自由の女神だけが遠くを見つめたまま、僕らの成り行きを気にしているかのようだった。

 

「なのに、なんで手なんか握るのよ…」

 

悔しそうな表情の彼女の唇から、そんな言葉が流れ落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はいじゃないわよ。この続きはどうなるの?」

ユウキ
「ああ、加湿器子さん。突然話しかけるのやめて下さいよ。ホントに」

加湿器子さん
「いいから早く続きを書きなさいよ」

ユウキ
「いや、もう終わりですよ」

加湿器子さん
「…」

ユウキ
「いやあ行き当たりばったりで適当に書いてはみたものの。やっぱりこういうのはむずかし」

加湿器子さん
「そんな言い訳が通じると思ってんの!?」

ユウキ
「急に大声ださないでくださいよ。びっくりするじゃないですか」

加湿器子さん
「こんな支離滅裂で、妄想爆発で、別段面白くもなんともない落書きみたいな話をそれでもここまで読んできた人の身にもなりなさいよ!ちゃんと終わらせるのが筋ってものでしょ!」

ユウキ
「大丈夫ですよ。普通の人は最後まで読みませんから。というか多分読んでる人ほとんどいないですから」

加湿器子さん
「アタシという、アナタにとって大切な人が読んであげてるじゃないの」

ユウキ
「ああ…ていうかだって、アナタ加湿器じゃないですか。人ではない。」

加湿器子さん
「何よそれ?!またそのオチでしめくくろうっていうの?!冗談じゃないわよ!馬鹿にして!だいたい、毎回人をオチに使っておいて…」

ユウキ
「だから、人ではないですよね」

加湿器子さん
「うるさいわね!!いい?!この際だから言わせてもらうけど、まだ今年は一週間以上残ってるのに早々と大掃除をあきらめるなんて、ダメ人間もいいところよ!」

ユウキ
「いやあ、だってお台場に行ったらもうどうでもよくなって…今にして考えると、あの日が日曜まるごと空いてる最後の日だったし」

加湿器子さん
「年が明けてもまだ、こんな汚い部屋でアタシと過ごそうっていうつもりなの?!」

ユウキ
「あ、大丈夫ですよ。去年と同じスチームつきの温風ヒーター出したから。これで加湿器子さんも…」

加湿器子さん
「何よそれ?!やっぱり前の女とヨリを戻そうってつもり?!それで代わりにアタシを押入れに放り込むつもりなのね!!」

ユウキ
「ヨリっていうか…いや、まあちょっと落ち着いてくださいよ」

加湿器子さん
「これが落ち着いていられるかっていうのよ!!馬鹿にして!こんな侮辱受けたの初めてだわ!それもクリスマスも近いって言うのに、一人パソコンに向かってくだらない書き込みをしてるこんなヤツに!そりゃ母親から、あたかもアナタが誰も一緒に過ごす相手が誰もいないのを分かりきってるかのように”24日の夜は実家に集合”なんてメールもくるわよ!!!」

 

疲れたので寝ます。

~浅草、そしてお台場へ~最終章”じゃあノンフィクションって何のことだろう”」への1件のフィードバック

  1. …え~と。途中まですっかり騙されてた私の脳内に、SEAMO『マタアイマショウ』が流れた事だけお知らせします f^_^;

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