遠く、
近く。
海鳴りは、聞こえ続けている。
誰かの声にも似たその響きは、
まるで自分の心の奥底深くから流れ出してくるようだ。
(伝えたいことが、あるんだ)
(君に、)
(伝えなきゃならないことが…)
止めるって…何を。
「あー!ゴメン、私もう行かなきゃ!これ、ここにコーヒー代置いておくね。じゃね!」
…。なんだよ。
(「止めてくれないの、って聞いてるの」)
止める…?
何を。
彼女の、結婚を?
今さら、
止める理由なんてないだろう。
彼女の気持ちに応えられなかったのは、僕なんだから。
彼女の挙式まで、
あと1ヶ月。
(続く)